秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
だってもう私は、後戻りのできない契約を交わしてしまったんだ。

「茜音……!?」

愕然とする涼晴を置いて、私は公園を出た。そのままマンションへの道をひた走る。

マンションのエントランスに飛び込むと、コンシェルジュたちがぎょっとした。こんな時間に女性が走って入ってくるなんて、ただ事ではないと思ったのだろう。

しかし、私が助けも求めず淡々とセキュリティカードを翳して中に入ったのを見て、問題ないと判断したらしい、とくに声もかけられなかった。

そのままエレベーターに乗り十八階へ。玄関に入るとしっかりと鍵をしめ、カーディガンの裾で残った涙を拭い「ただいま」と明るく取り繕った。

「茜音、早かったな。少しはリフレッシュできたのか?」

兄がわざわざ玄関まで私の様子を見に来てくれる。しかし、泣き腫らした目を見て絶句した。

「うん。大丈夫。スッキリした。また明日から、晴馬と一緒に頑張る」

笑ってみせると、兄はまだ少し複雑な表情で「ああ……」と頷いた。
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