秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
第五章

見守る愛

二年半前の秋のこと。

妹が資格試験に合格したことを受けて、家でささやかなパーティーをした。俺と妹と友人の涼晴を招いて、寿司と酒を囲む。

そろそろか?と頃合いを見計らい、俺は酒に酔ったフリをして自室にこもった。

俺が眠っていると思い込んだ妹と友人は、キッチンでさんざんいちゃついたあと、家を出ていった。友人の部屋で続きをするのだろう。

ふたりの関係をどう捉えればいいのか悩み、深く深くため息を吐く。

とりあえず、隣にある妹の部屋で続きをされなくて安心した。

「あの程度で酔うかよ」

誰もいなくなったキッチンへ戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。やけくそのように思いっきり呷り、一気に飲み干した。

昔から、酒は呑まれたフリをすることが多かった。本当に呑まれるまで飲まされてはたまらない。

飲み会などは、そろそろかな?と思うと「眠い! 寝る!」と言って戦線離脱する。そうすれば、面倒な酔っ払いたちに絡まれたり、下心のある女性に言い寄られたりすることもなくなり、楽なのだ。

今日、あえて酔ったと言って部屋に閉じこもったのは、妹への気遣いだ。きっとこんな日は、恋人とふたりでいたいだろうと思って。
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