秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
彼が日本に戻ってくるなんて思わなかったから、すべてをうやむやにしてフェードアウトするつもりだったけれど、まさか再び顔を合わせる日が来てしまうなんて。

気まずい沈黙がふたりを包み込み、時間だけが無為に流れていく。五秒か、十秒か、あるいはもっとだろうか。

なにも言えずに佇んでいると。

「生姜焼き弁当と野菜ハンバーグ弁当お待ちのお客さま~」

うしろから呼びかけられて振り向くと、店員さんがお弁当の入ったレジ袋を掲げて、できましたよと合図していた。

ベビーカーを押して窓口へ行きお弁当を受け取る。再び振り返ると、涼晴はベビーカーの中で眠る晴馬をじっと見つめていた。

「……それ、茜音の子?」

「……そう」

私の返事で、彼はだいたいの事情を察したのではないかと思う。そこまで勘の鈍い人ではないはずだから。

彼が仕事で渡米したあと、私が連絡を絶ったのは、別の男性との間に子どもができたから。普通はそういうふうに解釈するはず。

幻滅して立ち去ればいい。彼氏の帰りを待てなかった心の弱い女性、そう思って呆れてくれてかまわない。

なのに。

「……その子、いくつ?」

歳まで聞いてきたものだから、困惑してしまった。

まさか、自分の子かもしれないなんて、疑っていたり……する?
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