秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「……一歳くらい」

「くらい?」

「一歳と、ちょっと」

だって正直に『一歳五カ月です』なんて口にしたら、いっそう疑われてしまうもの。

この子は、涼晴との間にできた子。

でも、そのことは誰にも言えない。大切な兄にも、当然、涼晴自身にも。父親は死んだことになっている。

この秘密は墓まで持っていこうと、晴馬を産むと決めたときに固く誓った。

「名前は?」

名前まで聞くの? と私はたじろぐ。ベビーカーを押してさっさと帰ろうとするけれど、彼はスーツケースをゴロゴロと引きずって私を追いかけてくる。

「再会してそうそう質問攻めにしないで。だいたい、日本には戻って来ないんじゃなかったの?」

「戻って来ないなんて、俺がいつ言った?」

「それは――」

思わず押し黙ってしまう。彼の口から直接聞いたわけではないのだ。

彼は『待っていてほしい』と愛をささやいたまま私のもとを去っていった。私も当然待つつもりだった――真実を知るまでは。

今さら胸が締めつけられて息苦しくなった。とっくに忘れたはずの感情が蘇ってきて、また私を苦しめる。

「それで? 再会してそうそう不機嫌になっている理由を教えてくれないか?」
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