秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
夕べ、気まずい別れ方をしてしまったから、なんと声をかけていいのかもわからず、無言のまま彼に近づいた。

彼のほうもなにも言わず助手席のドアを開け、乗るように促す。話は中でしようということらしい。

「どこかへ行くつもりなの?」

助手席に乗り込みながら尋ねると、彼はドア枠に手をかけたまま真剣な顔で私を覗き込んだ。

「一緒に父のところへ行ってほしい」

「えっ……」

動揺から声が上擦る。これから涼晴のお父さんに会いに行こうって言うの!?

私は間違いなく嫌われているし、こんな時間に突然押しかけたら余計に嫌がられるのではないだろうか。

「涼晴のお父さんは、私に会いたくないと思う」

運転席に乗り込んだ涼晴にそう声をかけると、あらたまって私のほうに体を向けた。

「父親の意思は関係ない。誰がなにを言おうと、俺は茜音と結婚する。もうこれ以上邪魔をしても無駄だと宣言しにいくつもりだ」

ぎょっとして彼を見つめ返す。昨日あれだけ『家族にはなれない』と拒んだのを忘れたの!?

しかし、彼の意志は固そうだ。

「無理よ。涼晴のお父さんが認めてくれるわけがない」
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