秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「認めてもらおうだなんて思ってない。殴り込みに行くと思ってくれていい」

「殴っ……!」

ぎょっとして目を見張る。涼晴は軽く笑ってエンジンをかけた。

「緊張しなくていい。好かれに行くわけじゃないから。俺が父親に文句言ってるところを、横で見ていてくれればいいんだ」

安心させようとしてくれているのか、いつもの笑みを浮かべて軽い調子で言う。

けれど、私が一緒にいけば、兄の会社に迷惑がかかるかもしれないと思い出し、慌ててシートベルトを解いた。

「やっぱり行けない。私が行ったら、兄が――」

「斗碧と約束したんだ。俺がすべての責任を取るって。俺に任せてついてきてほしい」

涼晴に腕を掴まれ、はじかれるように振り向いた。待ち受けていたのは真っ直ぐな眼差し。体がフリーズしたように身動きが取れなくなる。

この八方塞がりとも言える状況をどうにかできるような策が、彼にはあるのだろうか。

兄が涼晴を信じてすべてを任せたというのなら、私も彼を信じるしかない。

「……わかった」

頷いてシートベルトをはめ直すと、彼は「ありがとう」と答えてアクセルを踏み込んだ。


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