秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「俺は次男ですよ父さん。兄も姉もいる」

「あんなのを長男と認めた覚えはない!」

これまで冷静だった父親が、突然声を荒げた。びくりと震え上がった私を庇うかのように、涼晴が前に立つ。

「兄の経営の手腕は一流です」

「それ以前の問題だ。男でも女でもないチャラチャラした格好をしおって。あれは我が家の面汚しだ」

チャラチャラした格好? いったいお兄さんはどんな人なのだろう。考えを巡らせていると、涼晴が私に耳打ちした。

「兄はトランスジェンダーなんだ。性にあまり執着がなく、男性の恰好をしたり女性の恰好をしたり好きにやっている」

なるほどと私は納得する。いかにも昔かたぎなこの父親では、性の自由など受け入れるのは難しいかもしれない。

「兄だけじゃない、姉さんだって会社の力になってくれているのに」

「女は信じられん。女など社会に出る必要はない」

私はぎょっと目を見開く。この人、とんでもない男性優位主義者だ。あまりに時代を逆行していて耳を疑う。
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