秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「あなたが話を聞いてくれないのなら、こちらにも考えがあります」

涼晴は再び立ちあがり、私を背中に庇うように立った。

「教授とは縁談こそお断りしたものの、懇意にさせてもらっています。彼は私を友と呼んでくれました。彼の力を借りれば、うちの会社と米企業との提携を解除することもできる」

父親は表情を激しく歪める。米企業との提携解除――つまり、実家の経営の妨げになることをしようとしているのだろうか。

「私を脅す気か!」

「あなたがやったことと同じことをしているだけです」

兄の会社を潰す――私がそう脅されたのと同じように、今度は涼晴が父親を脅している。

涼晴は私の肩を抱き、強い眼差しで父親を睨みつけた。

「金輪際、彼女とその家族に手を出さないことが条件です。私は彼女と結婚します。父となり、自分の責任を果たします」

父親は「勝手なことを!」と激昂し立ち上がる。

動じることなく父親と対峙する涼晴だが、その目に浮かぶものは怒りでも憎しみでもなく、まるで憐みのようだった。
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