秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
姉も同じく優秀であり、家業の手伝いをしているが、女性というだけで父親から距離を置かれ、重要なポジションを任せてもらえずにいる。

「だから俺は、すべての相続を放棄するつもりで苗字を母方の眞木に変えた。もうこの家の人間ではないことを印象づけたかったんだ。俺が辰己のままでいると、父は家業を俺に継がせるといいかねない」

涼晴はハンドルを握りながら、深いため息をつく。少し疲れた横顔を、私は助手席からじっと見つめていた。

「お兄さんやお姉さんのこと、大好きなのね」

「尊敬しているよ。彼らこそ認められるべきだ。なにより、俺はもう医者だからね。俺を本当に必要としてくれる場所はここじゃない」

涼晴が医師という仕事に誇りを持っていることは知っている。彼は医者であり続けるべきだと私も思う。

「父を脅すだけ脅してはみたが、斗碧の会社の件はもう少し手を考えたほうがいいな。父が制裁と称して嫌がらせをしてくる可能性がある」

涼晴の推測に身を凍らせ、私は言葉を失う。しかし、彼は「安心しろ」と言って私の頭をくしゃくしゃと撫で回した。
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