秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「俺なりにコネはあるし、斗碧がお世話になっている取引先の会社を抱き込むことは可能だろう。ただ、できれば汚い手段は使いたくないから、まずは正攻法で話をつけに行こうと思っている」

「なにをする気なの?」

「きちんと事情を説明して頭を下げて、契約を解除しないでほしいと伝えてくるよ。不器用なやり方ではあるけれど、一番誠意が伝わると思うんだ」

真っ向から挑もうとするなんて、実直な彼らしいやり方だ。

私もそれが一番だと思う。もうこれ以上な姑息な手段に振り回されるのは嫌だし、振り回すのも嫌だ。

「私もついていっていい?」

「茜音が?」

申し出に涼晴が驚いた顔をする。

「涼晴が頭を下げるなら、私も一緒に頭を下げたい」

私だって当事者なのだから、一緒に責任を負うのが筋ってものだろう。 

涼晴は苦笑しながら「じゃあ一緒に行こうか」と了承してくれた。

この件が片付けば、私を縛るしがらみもなくなる。私は自由に選択し、行動することができるようになる。

そうしたら私と涼晴は、家族になることができるのだろうか。

「涼晴――」
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