秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
受付で辰己涼晴と名乗ると、すぐさま社長室に通してもらえた。

どうやら辰己という名前を出してアポをとったらしい。正攻法だなんて言いながら、利用できるものは利用するあたり、涼晴って結構ちゃっかりしている。

社長はおそらく五十代くらいの、アグレッシブな男性だった。

おそらくと言ったのは、年齢不詳の若々しいファッションをしていたから。

赤いシャツにブラックのジャケット、ボトムは革、髪には金のメッシュを入れ、とてもお洒落だ。これもアートに携わる会社のトップとしてのこだわりかもしれない。

私たちは社長に挨拶をすると、すぐに事情を説明し、素直に頭を下げた。

まずは、私たちの内々のいざこざに御社を巻き込み申し訳ありませんでしたと。

そして、今後とも兄――藍葉の建築事務所と末永いお付き合いをよろしくお願い致しますと伝えると、社長は腕を組み、なんともいえない表情をした。

「事情はわかった。頭を上げてくれ」

言われた通り顔を上げ、緊張しながら反応をうかがう。

「まず、我々の立案した大切な建築計画を、私的な取引に利用しようとしていたことが、とても腹立たしいね」
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