秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
怒りを示され、私たちはもう一度「申し訳ありませんでした」と深く頭を下げた。

しかし、社長は「だが、誤解しないでほしい」と言って言葉を続ける。

「確かに私は、辰己家の斡旋で藍葉くんの事務所に建築計画を依頼した。しかし、契約の締結は私の意志と判断によるものだ。大事なプロジェクトを任せられる会社か、吟味した上で選んだ」

私たちは顔を上げる。そして、社長の顔に浮かんでいたものが、怒りなどではないことに気づく。

「我々は独立した企業であり、辰己家の傀儡ではない。辰己家がなにを言おうが、今さらこの建築計画を変更するつもりはないし、他社に移行するつもりもない。同様に、君らになにを頼まれたところで従うつもりもない」

誰の言葉にも耳を貸さないという強い意志を示された。辰己家どころか、私たちの意見にも。

確固たる信念を持ち、そしてそれを曲げない人なのだと、彼の態度と言葉から読み取れる。

「それに、正直に打ち明けるが、この案件に関して辰己家からの融資を我々は断っている。この建築計画に、辰己家は口を挟めるような立場ではないんだ。君らははったりをかまされただけだよ」
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