秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
自宅に帰る頃には、すでに十九時を回っていた。

今日だけは兄に保育園のお迎えを頼んでいたのだが、兄は張り切りすぎて朝から遠足前の子どもみたいにソワソワしていた。

無事お迎えミッションを完遂したようで、家に帰ると兄はリビングで晴馬と仲良く遊んでいた。

辺りにはつるつるのぬいぐるみ――怪獣のフィギュアやバルーンマスコットなどが転がっている。

カーペットは撤去しフローリングにして、晴馬がよく遊ぶ箇所にはプレイマットを敷き詰めた。

ソファは今後、ダニや埃がたまりにくい硬い素材に買い替えるつもりだ。毛足の長いぬいぐるみや綿の入ったクッションも置かないようにして、ハウスダストが発生しにくい生活を心がけている。

そのかいあってか、あれから晴馬がアレルギーや喘息を起こすことはない。

「お帰り。ふたり揃ってどこ行ってたんだ?」

兄にはあえて行き先を伝えなかった。取引先の社長に会うだなんて言ったら、そんなことしなくていいと引き留められるかもしれないし、ついていくと言われても困ってしまう。

「ちょっとな。でも、これですべて片付いた。茜音を縛るものはもうなにもないよ」

涼晴が答えると、兄は気が抜けたように肩を落とし、くしゃっと顔を歪めて情けない笑みを浮かべた。
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