秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
いや、そんなわけがないと淡い期待を振り払う。だって彼は、別の女性と結婚してしまったんだもの。

言葉を続けられずにいると、彼は小さく息を吐いて、かぶりを振った。

「君がしあわせそうで安心した。さすがに子どもがいるとは思わなかったから、少し驚いたけれど」

痛々しい笑顔を向けられ、余計につらくなる。

本当は夫なんていないけれど、どうして真実を言える?

別の女性と結婚が決まっていたあなたの子どもを、勝手に産んで育てていましただなんて。

こんな罪深いこと、永遠に話せっこない。

晴馬を産んだのは、私のワガママと、身勝手な独占欲なのだから。

晴馬の存在に気がついたのは、妊娠五ヶ月に入ったときだった。

病院で見せてもらった下腹部のエコーには、はっきりと人の形が写っていた。

お腹の中でぽこぽこと動く感じ――てっきり腸の調子がよくないだけかと思っていたけれど、それが生命の息吹だったと知って、とても堕ろそうなんて思えなかった。

彼との間に宿った愛の証し――それをなかったことにするなんてできない。この手に抱きたいと願ってしまった。
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