秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「ありがとう。涼晴。茜音」

兄は申し訳なさそうに額に手を当てた。もしかしたら、私たちがどこに行ってきたのか感づいているのかもしれない。

「斗碧。あらためて言わせてほしいことがある」

プレイマットの上で胡坐をかく兄の前に、涼晴は膝をつき真剣な顔で向き直る。

兄は次の言葉を察したらしく「ストップ、やめてくれ」と手でバツを作った。

「言わせてくれ、斗碧。筋を通さなきゃ」

「どうせ『茜音さんをください』とか言うんだろ? 好きに持っていけよ。俺は異論なんかないし、だいたい、もう子どもまで生まれちゃってんのに今さら許可もなにも」

兄は照れくさそうにまくし立て、抱き上げた晴馬の相手をしてごまかす。

「そもそも俺は、茜音の親でもないんだからさ」

目を逸らしてそんなことを言うけれど、兄には両親以上に面倒をかけたと思っているし、兄がいてくれたからこそ今の私がいるのだと思っている。

「でも、お兄ちゃんは私の親みたいなものよ?」

私の言葉に兄の肩がぴくりと震える。

「斗碧」

振り向いた兄は、私と涼晴の視線が一心に自分へ向いていることに気づきたじろいだ。私たちを代わる代わる見つめ、反応に困っている。
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