秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
すると、涼晴が両手を床について、兄に向かって深く頭を下げた。

「お兄さん。茜音さんを俺にください。それから、晴馬を俺の息子として認めてください」

兄は呆然と涼晴を見つめていたが、ふと顔を真上に向けた。

いったいなにをしているのか――それが涙を堪えている仕草なのだと気づき、兄らしさに思わず笑みがこぼれる。

「……茜音をしあわせにしてやってくれ。それと、二度とお兄さんとは呼ぶな。気持ち悪い」

グスッと鼻をすすりながら兄が答える。

大袈裟すぎる兄をたしなめようとして、ふと自分の目尻にも涙が滲んでいることに気がついた。私まで影響されてしまったみたいだ。

兄は「ほら」と抱いていた晴馬を涼晴の腕に預ける。涼晴が晴馬を抱くのはこれが初めてだ。

「……晴馬」

涼晴は一瞬戸惑ったような顔をしたけれど、これが自分の守るべき命だという実感が芽生えたのか、次第に表情が柔らかくなっていった。見守る瞳は慈愛に満ちている。

力のこもる腕からは、大切に優しく包み込みながらも、しっかり抱き支えようという固い決意が伝わってくる。

晴馬もそれに応えるかのように、きゅっと涼晴に抱きついている。

「温かいな。……それから重い」
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