秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
冷蔵庫にある俺印の麦茶をひと口飲むと、そのままリビングを出ていこうとする。去り際、背中を向けたままぶっきらぼうに言い放った。

「俺、今日、帰ってくる気ないから。涼晴泊めてもいいぞ」

「えっ……」

慌てて兄のもとに駆け寄り腕を捕まえる。これまで仕事以外の理由で外泊なんてしたことがなかったのに、いったいどこへ行くつもりなのだろう。

「……なんだよ」

「お兄ちゃん、どこ行くの?」

「……デート」

「へっ……」

予想外に素直な回答が来て、兄を掴む手が緩んだ。その隙に兄はさっさと玄関に向かって歩いていく。

兄がデートだなんて……。いやむしろ、これまでデートのひとつもしてこなかったほうが異常だった。

もしかして、私と涼晴がうまくいくことで兄の肩の荷が下りて、女性とお付き合いする心の余裕ができたのかな? そうだとしたらうれしい。

靴を履いて今にも玄関を出ようとしている兄に向けて、声を張り上げる。

「お相手は誰?」

「言ったところで、どうせお前は知らないだろ」

「お弁当を作ってきてくれる私と同じ年の子?」
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