秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「……! ど、どうだっていいだろっ!」

あからさまに動揺した兄が、逃げるように玄関を出ていく。当たりだなと思いながら私は手を振った。

「行ってらっしゃい!」

「行ってきます!」

やけくそみたいな声とともにドアが閉まった。

しかし、私はすぐさま我に返り、リビングに走って戻る。食事中の晴馬をひとりきりにしてしまった。またご飯で遊んでいるかもしれない……!

慌てて戻ってみると――。

「まー、まっ!」

晴馬はスプーンをグーで握りながら、一生懸命ご飯をすくって口に運んでいた。

私はホッと胸を撫で下ろす。ご飯は食べるもの、そんな教えがちゃんと伝わっていたよう。

晴馬もちょっとずつ成長しているみたいだ。 



少し遅れて家を出ると、すでに涼晴はマンションの前に車を停めて、私たちを待っていてくれた。

「ごめんなさい、遅くなって!」

「平気だよ。それより、準備が大変だったんじゃない? 大丈夫?」

「あはは……」
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