秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
涼晴と兄は高校時代の同級生で、親友と呼べる仲だ。

私が涼晴と知り合ったのも、兄がしょっちゅう家に彼を呼んでいたから。

「茜音が変な男に引っかかってると思って飛んできたんだが――」

兄は自転車を引きながら、まだ信じられないと言った顔で涼晴を見上げている。

「日本に戻ってきていたんだな。驚いた。教えてくれればよかったのに」

「今日帰国したばかりだよ。連絡しようと思っていたら、先に茜音ちゃんに会っちゃって」

兄の前で、私たちは『茜音ちゃん』『涼晴さん』と呼び合っている。

かつて私たちが男女の関係であったことを、兄は知らない。話したが最後、兄は大騒ぎするだろう。

そもそも過保護な兄は、私の男女交際を認めてくれた試しがない。妊娠が発覚したときだって、男泣きしたくらいだ。

「それで、涼晴はいつアメリカに戻るんだ?」

「ふたりして、どうしてそんなに俺をアメリカに戻したがるんだ。ずっと日本にいるよ」

「また前の病院に戻るのか?」

「ああ」

兄はあっさりと帰国の事実を受け入れ、旧友との再会を喜んでいるよう。

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