秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
エピローグ
また桜の季節がやってきた。

甘い香りで満たされた桜並木を、親子三人並んで歩く。

去年は私と晴馬のふたりだけでせわしない日々を送っていたから、ゆっくり上を見上げる余裕もなかったけれど。

今年は違う。のんびりとお花見を楽しみながら歩く余裕がある。

私の左手の薬指には、新たな指輪が輝いていた。涼晴とお揃いのマリッジリングだ。柔らかな曲線を描くリングで、私の好きなピンクダイヤがさりげなく埋め込まれている。

まるでこの桜の花のよう、甘くて優しい薄紅色をしている。

「まま! おはな!」

頭上で揺れる花々を指差して、晴馬が叫ぶ。

「うん。『さくら』って言うんだよ」

晴馬は手を伸ばしてぴょんぴょんと跳ねた。花びらに触りたいのかもしれない。自分の力では届かないと気づくと、今度はパパの足元に駆け寄り抱っこをせがんだ。

「ぱぱー! ぱぱー!」

「わかったわかった。ほら、おいで」

涼晴が晴馬の足を首にかけて肩車をする。花との距離が一気に近くなり、晴馬は興奮気味に上を見上げた。

「あ、こら、しっかり捕まっててくれ! 落ちるなよ」
< 200 / 205 >

この作品をシェア

pagetop