秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
ふたりのやり取りを見守りながら、クスクスと笑う。

一年かけて私たちは本物の親子になった。シングルマザーだった頃が嘘のよう。なんだか不思議で、とてもしあわせだ。

今、私と晴馬はマンションの二十二階にある涼晴の部屋に住んでいる。籍も入れ晴れて夫婦となり、一緒に暮らすことになった。

兄はひとり暮らしになってしまったけれど、たまに彼女を家に呼んでいるみたいだ。

一度だけ、兄と彼女が一緒に歩いているところを見たことがある。うしろ姿だったから顔まではわからなかったけれど、小柄で、かわいらしい印象の女性だった。

「あ、枝は折っちゃだめだぞ? やさしくだ。やさしーく。いいこいいこ」

「いーこいーこっ」

どうやら晴馬の手が枝に届いたようだ。一度はがっしりと握ったが、今は優しく撫でてあげている。二歳半になり、言葉の理解もだいぶ進んだ。

「あ、そうだ、写真」

私は携帯端末を取り出し、カメラを起動してふたりに向けた。背景の桜が優しくふたりを彩ってくれる。

涼晴は相変わらず写真が得意ではないけれど、晴馬と一緒なら撮らせてくれる。立派なお父さんの顔になれるからと。

「いくよー!」
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