秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
へぇ、と私と兄は顔を見合わせる。涼晴ってそんなに優秀だったんだ。

一瞬誇らしい気分になるものの、いやいや違うでしょと首を横に振った。私と涼晴はもう他人同士。昔のような恋愛関係じゃないのだから、ここで私の鼻が高くなる意味がわからない。

「確か、丸二年、研究留学してたんでしたっけ?」

「そうそう。アメリカの偉~い教授のご指名で」

「それで若い子たちがキャーキャー言ってるんですね。アメリカ帰りのエリートで、若くてイケメンの独身医師ですもんねー。お給料も他の先生よりいいんだろうなー」

独身医師という言葉に肩がぴくりと震える。

本当に涼晴は結婚していないの?

気がつけば体を斜めにして、看護師たちの話に聞き入っていた。

「外来は久しぶりで慣れないことも多いだろうから、近くでサポートしてあげて。眞木先生のことだから、すぐ思い出すと思うけど」

「ふふ、ちょっと楽しみになってきた。わかりましたー」

ふたりの看護師が持ち場に向かう。兄は「あいつ、どこ行ってもキャーキャー言われてるんだな」とすっかりからかう気満々でにやにやしている。
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