秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「起こしちゃってごめんね」

「いや。一瞬気がついただけだから。またすぐに寝たし」

ちなみに、兄には『夜中に泣き声が聞こえても、絶対に起きなくていい』と言ってある。この家の家賃は兄が支払ってくれているし、しっかり睡眠を取って仕事をしてきてほしい。なにより共倒れをしたら大変だ。

早くに亡くなった両親の代わりに、兄が私を育ててくれた。成人してからもずっと一緒に暮らしている。

私が子どもを産んだ今でも、その関係は変わらない。私どころか、息子の晴馬の面倒まで見てくれている。

なにしろ、晴馬の父親は『死んで』しまったのだから。

育児の手伝いや経済的支援もしてくれる兄には、完全に頭が上がらない。

「あんまり無理すんなよ」

そう言って兄は朝食も取らずに出かけて行く。

スーツ用の白シャツに濃紺のパーカーを重ねて、デニムとスニーカーで自転車通勤をする兄は、三十三歳という年の割には若く見える。

やんちゃそうに見えて、その実、仕事はきっちりこなすタイプらしい。兄はそこそこ名のある建築士で、若くして個人事務所を設立し、収入もかなりある。

その代わり、帰宅は遅く毎日忙しい。ちなみにスーツは事務所に置いてあって、必要なときだけ着替えるそうだ。

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