秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました

色褪せぬ愛

ふたりを診察室から笑顔で送り出しながらも、俺は内心ひどく動揺していた。

電子カルテをスクロールし過去に遡る。彼女はこの病院の産婦人科で出産しており、そのときの記録がすべて残っていた。

健診時の週数や出産日を見れば、着床のタイミングを用意に計算することができる。

ざっと見る限り彼女の妊娠は、俺たちが付き合っていた時期と重なっていて、疑惑がいっそう濃くなった。

夕べ、彼女と出会ったのは本当に偶然だ。

二年ぶりの故郷、ふたりの思い出の道に足が向かってしまったことは否めない。だが、まさか本当にあんな場所で再会するとは思わなかった。

俺がアメリカへ行ってしばらくすると、彼女は電話番号やメールアドレスを抹消し、俺との連絡手段をすべて絶った。

理由についてずっと考えてはいたのだが、夕べ、彼女が子どもを連れているのを見た瞬間、ふたつの可能性に行き当たった。

ひとつは、俺の帰国が待てず別の男性と交際を始め、すぐに妊娠し結婚に至ったという可能性。

そして、もうひとつは――あれが俺の子であるという可能性。

焦燥ばかりが募る。
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