秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
俺が日本にいた期間と着床時期が合致するなら、後者――俺の子と考えて間違いないだろう。

愛されているなどという自惚れではなく、彼女の性格を考えた上での確信だ。彼女は浮気ができるような器用なタイプではない。

だが、その推測が正しいとするなら、なぜ身ごもったことを知らせてくれなかったのか。

ひとりで産み育てるような決断をしたのはどうしてだ? 俺が父親だと知られたくない?

きちんと再計算しようと、電子カルテをまじまじと睨んだところで、横から声をかけられた。

「眞木先生? 怖い顔でどうかされましたか?」

通りがかった女性看護師に阻まれ、慌てて電子カルテを閉じ愛想笑いを作る。

「ああ、大丈夫だよ。少し、カルテのシステムを確認してた。二年も経つと、もうすっかり忘れてしまっていて」

彼女はうまくごまかされてくれたようでクスクス笑った。

「わからないことがあったら、遠慮なく聞いてくださいね」

「ありがとう」

「先生の準備ができているようでしたら、次の方、呼んでもかまいませんか?」

「うん。頼むよ」

整理しきれない気持ちを押し殺し、俺は次の患者に向き合う。
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