秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
私と晴馬が、豪華なマンションに住まわせてもらえるのは、兄のおかげだ。

でも、いつかは出ていかなきゃならないと思っている。兄はずっといていいと甘いことを言ってくれるけれど、いつまでも頼るわけにはいかない。

今は時短勤務で収入も少ないけれど、もう少し晴馬が成長したらフルタイムで働いて、兄のマンションを出よう。

……じゃないと、お兄ちゃんも結婚とかしにくいだろうし。

兄のうしろ姿をぼんやり見つめていると、ぺちっという音と、楽しそうな晴馬の笑い声が響いてきた。

嫌な予感がして視線を落とすと、晴馬が朝ごはんのミートボールをテーブルに投げつけているところだった。

……あー……。

汚れてしまった手や机にもげんなりするが、食べ物を投げて遊んでいることにもげんなりだ。ついでに、今が忙しい朝だということにも。

心の狭い母で申し訳なく思う。

「……晴馬。ご飯は食べるものだよ。投げちゃダメでしょ?」

べとべとになった晴馬の手を布巾で拭いて、テーブルの上に転がったミートボールは――捨てるのももったいないので仕方なく自分の口に放り込む。

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