秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
晴馬は私の言っていることなんて全然理解できていないようで、きゃっきゃっと喜んでいる。

保育園からは、この時期、食事中に頭ごなしに叱るのはよくないと言われている。食育ってヤツだ。

仕方なく文句を呑み込み、晴馬の朝ご飯を再開した。

朝の準備は大忙しだ。ゆっくりメイクをしている時間なんてないから、最低限の肌下地に、眉毛だけはしっかり描いて、ピンクベージュのリップをざっとひと塗り。

服はカットソー、ジャケット、パンツの組み合わせをルーチンワークのように着回している。

靴やバッグはいつも同じ。どれにしようかなんて迷っている時間はない。

グズる晴馬をなだめながらも、指輪だけはきちんと左手の薬指にはめた。

この指輪は私にとってお守りのようなもので、なければ落ち着かない。

忘れなければならない相手からもらったものなのだが……別に未練があるとか、そういうわけではないのだ、精神安定剤のようなもの。

……指輪くらいしても、許されるよね?

自分を納得させたあと、指輪をそっとさすって、今日一日無事に過ごせますようにとお祈りをした。 

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