秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
その頼もしさを独占していた時期があった。彼の特別になって、しあわせだった瞬間が……。

「こんなに重たいの、よく持っていたね」

涼晴が二年前と同じ顔で微笑む。私は苦笑いを浮かべて、もうひとつの買い物袋を両手で持った。

「私に付き合って大丈夫? どこかへ行くところだったんじゃない?」

「今日は休みだから、久しぶりに近所を歩いてみようと思って。急ぎの予定はないから大丈夫だよ」

私と涼晴はゆったりとした歩調で桜並木を歩く。もう桜はすっかり花が散ってしまって、緑の葉っぱが茂り始めている。

「足の調子は、どう?」

「あ、うん。もうほとんど腫れは引いたわ」

涼晴に診察してもらってから二週間。足の腫れはほぼ収まり、痛みもだいぶよくなった。

「よかった」

そこで会話が途切れたので、まずいことを切り出される前に話題を逸らしてしまおうと画策する。

海外での仕事はどうだった?なんて聞こうとするものの、下手をすれば地雷を踏むことに気づき困惑する。そうこうしている間に、彼に切り出されてしまった。

「ところで、一度話がしたいんだけど。晴馬くんが眠ったあとでいいから、少しだけ時間を取れないかな?」
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