秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
とうとう言われてしまった。私は逃げる理由を必死になって探す。

「……しばらくは、難しいかな。夕べ、晴馬が熱を出してしまって」

「熱?」

涼晴が深刻な顔で反応する。医者として、熱と聞いたら放っておけないのかもしれない。

「病院には行ったの?」

「ううん。休日診療はすごく混んでいるから。待たされている間に、余計具合が悪くなっちゃいそうだし」

「そうだよな。まだ小さいのに、長時間待たされるのはつらいよな」

涼晴も理解してくれたようで難しい顔で唸る。

「薬は足りてる? 解熱剤とか」

「あ、うん。前に風邪を引いたときにもらった薬が少し余ってるから」

ただ心配なのは咳だ。咳止めの薬は持っていない。どうかこれ以上、咳がひどくなりませんようにと祈るような気持ちになる。

「熱だけ? 他に症状は?」

「乾いた咳をしていて」

「咳か……呼吸は? 苦しそうだったり、喘鳴音が聞こえたりしない?」

「た、たぶん……」

鼻も詰まり気味だから、とにかく苦しそうにはしているけれど、それが喘鳴音なのかと聞かれると、正直言ってよくわからない。

「大丈夫だと思うんだけど……」
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