秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
曖昧に返事をすると、彼は少し悩んだあと、なにかを思いついたかのように顔を上げた。

「俺が診にいこうか?」

「え……!?」

突然の申し出に驚き足を止める。診るって、診察してくれるってこと?

「いや、いい、そんな、迷惑だろうし!」

私はパタパタと手を振って遠慮する。そこまで甘えるのは申し訳ないし、そもそも整形外科の涼晴に子どもの風邪を見せたところでわかりっこないだろう。

「だいたい涼晴は整形外科でしょう?」

「ひと通りの科はこなせるよ。もちろん、小児科の専門医には及ばないから、明日はきちんと小児科に行ってほしいけれど、今すぐ病院に行くべきか判断するだけなら俺でも充分だ」

そう言って優しく微笑まれ、心がぐらりと揺れる。

涼晴が診てくれたら、安心できるかもしれない。軽い風邪だと言ってもらえれば、今夜は穏やかな気持ちで過ごせるだろう。

もし仮に、早く病院へ行ったほうがいいような状態なら、このまま家で看病を続けるのは危険だ。

「……頼んでもいい?」

晴馬のためだと自分に言い聞かせ、余計な意地を捨てて頼み込むと、彼は「もちろん」とひと好きのする柔らかい笑みを浮かべた。


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