秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
玄関の前まで荷物を運んでくれた涼晴は、自宅から診察用の簡易セットを持ってくると言って、再びエレベーターへ乗り込んだ。

「ただいまー」

そう声をかけると、晴馬の相手をし疲れたのだろう、ぐったりした兄が「おかえりー」と生気のない声をあげた。

晴馬はリビングでぬいぐるみをぎゅうぎゅうと抱きしめて、咳をしながらも遊んでいる。

「さっきまでグズッてたんだ。必死に抱いて、寝かしつけて、でも十分と経たないうちに起きちまった」

げんなりとした顔で言う。やっと寝かしつけたのに起きてしまったときのショックといえば、私にも覚えがある。

「本当にお疲れさま、ありがと」

私は買ってきたものを冷蔵庫や戸棚にしまったあと、兄とバトンタッチをすべくリビングに戻った。

「そうだ、お兄ちゃん。これから涼晴さんが晴馬を診に来てくれるって」

「涼晴が?」

「うん。そこで会って、荷物を運ぶの手伝ってもらったの」

兄はソファでごろんと横になり力尽きていたものの、涼晴の名前を聞いてがばっと起き上がった。

「大丈夫なのか? だって、小児科なんて守備範囲外だろ?」

「その辺は大丈夫みたい。現状の診断くらいはできるって」
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