秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「……よかった。結構咳してるから、心配だったんだ」

話をしている間に涼晴が到着したらしく、ドアフォンがピンポンと鳴った。

兄は玄関に飛んでいってドアを開け「おお、友よ!」と大袈裟に涼晴を迎え入れる。涼晴が苦笑いしながら入ってきた。

「涼晴さん。わざわざ来ていただいてすみません、せっかくのお休みの日なのに」

兄の前だからと礼儀正しく振る舞うと、涼晴は私に合わせて涼しい顔で応じてくれた。

「それで、晴馬くんは……元気はそこそこあるみたいだね」

カーペットの上で遊ぶ晴馬を見て、少し安心した顔をする。

しかし、タイミング悪くケホケホと咳をしだしたので、涼晴はわずかに顔をしかめて、バッグの中から聴診器を取り出した。

「よし。じゃあ、胸の音を聞かせてくれるかな?」

カーペットに膝をついて晴馬ににっこりと笑いかけると、晴馬も嫌な感じはしなかったようで、されるがまま大人しく従った。

背中から音を聞いたあと、次は前から。涼晴は「少し狭くなっているかな」と悩ましい顔で聴診器を外す。

「肺は今のところ大丈夫そうだけど、気管支炎が心配だな。風邪から喘息を引き起こすケースもあるし、呼吸音にはよく注意して」
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