秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
玄関で晴馬をベビーカーに乗せ、ハンドルのフックにおむつや着替えの入った通園バッグをかける。

エレベーターに飛び乗り、徒歩五分の保育園へ。晴馬を預け終わったあと、私は会社に直行する。

外はちょうど桜が満開だけれど、のんびり眺めている時間はない。せめて深呼吸をして、咲き始めの桜の香りを肺に取り込む。

余裕を持って準備をしているにもかかわらず、なにかとトラブルに見舞われ、会社に到着する頃には始業ギリギリだ。子どもとの生活は計画通りにはいかない。

慌ただしい一日が今日も始まった。



藍葉(あいば)茜音。二十八歳、未婚。

兄――藍葉斗碧(とあ)のサポートのおかげで、なんとかシングルマザーをやれている。

以前は大手不動産会社の営業として働いていたが、出産を機に退社。……子持ちをフォローする余裕はないと暗にプレッシャーをかけられ、辞めないわけにはいかなかった。

今は小さな不動産会社の営業事務として働いている。社長とも気さくに話ができるアットホームな会社だ。

もともと近い仕事をしていたこともあり、時短勤務で休みの多い私でも重宝してもらえている。

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