秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
涼晴はダイニングテーブルにふたり分のミネラルウォーターを運びながら、そんなことを尋ねてきた。私は椅子に座ったまま、彼を見上げる。

「……友達のところに行くって嘘ついてきちゃった。そういうの、迷惑?」

恐る恐る見上げると、涼晴は笑みをこぼして私をうしろから抱きしめた。

「迷惑なわけないだろ。どうしてそう思う?」

「だって、兄がいないときに一緒にご飯を食べるって約束だったから……」

無駄に会いたがるようなしつこい女は嫌いなのではないか――そんな不安が脳裏をよぎる。

なにしろ相手は五つも年上の男性、女のワガママにいちいち振り回されている暇はないなんて思っているかもしれない。

そんなことを考えていると、彼の大きな手のひらが私の頭の上に乗っかった。

「今さらなに言ってるんだ」

ぐしゃぐしゃっと髪を乱したあと、私の両頬を手で挟み込む。ぶちゃむくれのアヒルみたいな顔にされ、私はムッと眉を寄せた。

「もしかして、まだ茜音は俺のことを夕飯のお供だとか思ってる?」

「そ、そんなことは――」

「こんなことする関係なのに、今さら距離を置こうとするなよ」

振り仰げば、艶めいた悪い顔。私の額にキスをすると、手を下に滑らせ、胸元から指を差し入れた。

「っ、ん……」
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