嘘が私に噛み付いた
「遠藤さん、大丈夫ですよ。今日はゆっくりしてって下さい。……それに、実は俺と浅見、付き合うことになったんで。これからは送るのも俺の役目です。今までこいつのこと送って下さってありがとうございました」
「そんな…」
下から盗み見た篠塚は、勝ち誇ったように遠藤さんを見ていた。その言葉に居た堪れないような心地になりながらも、決してその言葉を否定しなかった。
なぜならそれは私に取ってとても都合が良かったからだ。
「行くぞ」
耳元で篠塚が囁く。遠藤さんの視線から隠れるように小さく頷いて、私たちは小走りで逃げるように店を出た。
「……ねえ、本当に付き合うの?なんだかノリで付き合うみたいになっちゃったよね?私そもそもどういう流れで付き合うってなったのか酔ってて覚えてなくて……暇だしとか言ってたのは覚えてるんだけど、暇だしってどういう流れ??」
店を出て、早々に帰るために新宿駅まで足早に二人で歩く。
掴まれていた腕はとうに離されており、お互いの足取りでしっかりと進む。
「どういう流れでもいいだろ、言質は取ったし、お前も付き合うって言ったのは覚えてるんだろ。嫌じゃなくて暇なら付き合ってみてもいいだろーが」
「そう……なのかな?」
「そうなの。遠藤さんと付き合うよりはよっぽど良いだろ」
その言葉に息を飲んだ。