嘘が私に噛み付いた
それからしばらくの期間、浅見と遠藤さんの関係を注意しながら観察していた。
やはり、過剰なくらい浅見は触られている。
「浅見、今度の会議の資料のここなんだけど……」
遠藤さんの声が聞こえて、そっと視線を上げる。そこには、資料を画面に出した浅見が握るマウスの上から、遠藤さんが右手を重ねて画面を操作していた。
浅見の横顔は心無しか青褪めている気がした。
……なんだあれ、めっちゃくちゃ気分悪い。
「遠藤さーん。すいません、ちょっと聞きたいことがあって〜」
へらっと笑って、二人に近付くと遠藤さんはパッと近すぎる身体を離す。
「……今じゃないと駄目かい?」
どこか不機嫌そうな遠藤さんを宥めながら、俺はしょうもないことで呼んだどうしようもない後輩として遠藤さんを自分のデスクまで引き摺った。
横目に浅見を見ると、慌てて会議用の資料を直していて、次こそ下手に遠藤さんに指摘されるなよ、と心の中だけでエールを送った。