恋の心音
レスリーは胸にそっと手を当てる。生きている証である心臓は、いつも以上に高鳴っていた。前まで、こんなにも胸が騒ついたり高鳴ることはなかった。しかし、ある女性と出会ったことでレスリーの全てが変わっていったのだ。

「ニヤニヤしちゃってさ〜。本当にあの子のことが好きなんだね。この家に来たばっかりの頃は無愛想だったのに」

奏の言葉は確かだ。レスリーはこの家にホームステイという理由で住まわせてもらい始めた頃、無表情で無感情だった。それが今、レスリーは微笑んでいる。

ガチャリと玄関のドアが開く音がした。待ちきれず、レスリーはリビングを飛び出す。そして玄関で靴を脱いでいる途中の栗色のショートカットの女性を抱き締めた。



レスリーが鍵宮澪(かぎみやみお)の住んでいる家を人間界での居場所として決めたのは、騒がしくなさそうな人たちだったからだ。騒がしい人間を死神は好まない。

海外から来た留学生として冥界からやって来たレスリーの目的は、人間の魂を狩ることだった。冥界での暮らしがあまりにも退屈になってきたため、遊ぼうと思ったのだ。
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