恋の心音
澪の魂を狩るチャンスを掴むため、レスリーは澪の通う大学に一緒に通うことを決めた。そして、そこで人の輪の中に入って楽しそうにする澪を目にしたのだ。

「桜っていう手話はこうするの」

澪は友達に囲まれ、手話を教えていた。それを見つめるレスリーに友達の一人が声をかける。

「澪ってすごいの!耳が聞こえないのを感じさせないほど努力家で、とっても優しい人なの。だから、この大学で人気者なのよ」

本当に優しい人なのかどうか、レスリーは気になって興味から澪を観察することにした。人間は裏と表を持って生きる生き物だと死神であるレスリーはよく知っている。優しいと言われている人でも、裏ではひどいことをしているというものを何度も目にしてきたからだ。

澪はどんな授業でも熱心に受けていた。周りの生徒がこっそりおしゃべりしていようが、スマホをいじっていようが、居眠りをしていようが、真剣な顔でノートにペンを走らせ、教授の口元や黒板に目を向けている。集中のしすぎで疲れてしまうのではと思うほどに。
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