恋の心音
「こういう歌を聴いて、真っ先に頭に思い浮かぶ人がレスリーにとって大切で大好きな人なんだよ」

「つまり、俺は恋を……?」

死神なのに、人間に恋をしてしまった。死神ということを隠して恋愛をする同期を何人も見てきたことはある。しかし、人間と死神が持つ時間はあまりにも違いすぎる。一緒にいられる時など、レスリーからすれば一瞬だ。

何度も自分の立場を恨み、想いを捨てようとした。しかし、そのたびに相談に乗ってくれる奏が言ったのだ。

「あんたが後悔しない道を選びなよ。後悔してからじゃ全部遅いんだから」

その言葉に心を動かされ、レスリーが自分の気持ちと向き合い始めた頃、澪が一ヶ月カナダに留学することが決まった。それをチャンスと捉え、レスリーは手話を練習することを決めたのだ。

自分の想いを伝えるために……。



一ヶ月ぶりに会えた澪が愛おしく、レスリーはただ抱き締め続ける。会えない分、澪の大切さや自分がどれだけ澪を好きなのかがこの一ヶ月でわかった。

しばらくして澪に腕を軽く叩かれ、レスリーはゆっくりと澪を離す。澪の顔は真っ赤に染まっていた。
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