恋の心音
チラリ、とレスリーが奏を見ると、奏は察したように微笑んで残っていたコーヒーを飲み干すと、「ちょっと出かけてくるね」と言いリビングを出て行った。玄関のドアが閉まる音がしたため、この家にはレスリーと澪の二人きりだ。

「うわ……緊張する……」

澪には聞こえないひとりごとを呟き、レスリーは目線をあちこちに向けてしまう。早まった鼓動が自分の耳に聞こえてしまいそうで、それでも伝えたいという気持ちがあって、人の心は複雑だと改めて知った。

「澪、話を聞いてくれるかな」

レスリーは深呼吸をし、澪の肩を叩いて言う。澪は不思議そうな顔で頷き、レスリーは続けた。

「澪に言いたいことがあるんだ。でも、うまく言えないから、重いかも知れないけど歌で伝えようと思う。聴いてください」

自分が人間だったら、澪を好きだと知ってからレスリーは何度も思った。人間だったら最初から澪の優しいところに気付けて、自分の心も最初から温かかった。こんな自分の想いを伝えていいのか、今でも少し迷いがある。
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