転生幼女はもふもふたちに愛されて最強でしゅ!
おわりがはじまり
王アルダンをなくしたアルフレートは、一時的な混乱を迎えたものの、他国が攻め入ろうと考える隙も与えず、オリエイエが介入した。
その過程で、ジニアスがこの国を目指した理由を聞くことができた。この国の王アルダンが不穏な動きをしていると聞きつけて、旅人としてふらふらしていながらもその隠した身分を利用して国に潜り込み、情報を得ようとしたらしい。その道中、山賊に襲われリファたちをと出会ったというわけだ。
オリエイエはアルバやアンガッサ、アルフレート国の貴族たちと相談し、王アルダンの意志を慮り次の王としてまだ幼い双子を立てた。
トーマとソーマは父の愚行を償うだけの覚悟はあると、クロマユでサッカーをしていたとは思えない頼もしい言葉で誓ってくれた。それにはアンガッサとアルバも補佐に入ることになっており、頼もしい限りである。
オオガミはまた眠ってしまったが、その神々しい姿を垣間見た人々、そして神官アルバ、美しい姿を目撃したオリエイエが証人となり、オオガミは決して呪いの魔法を振りまくような神ではないと世界に広めると約束された。
昔、いけにえにされ、オオガミとクロマユに救われた人の日記もある。
すべてが、いい方向へと向かっている。
リファはしばらくの間、クロマユとのんびりと暮らした。
アルフレートが落ち着くまでは、ジニアスと共にここにいようと話し合ったのだ。
オオガミがハンスたちを食べなかったことで、ハンスたちも城に出入りするようになった。とはいえ、リファとは意思疎通できるが見た目は恐ろしい銀狼なので、基本は遠吠えのやりとりである。
離れていても家族だと、リファはもうわかっていたから。
アルバはしばらくは元気がなかった。王の隠し部屋が見つかり、そこでアルダンの日記が発見されたそうである。しかし、アルバはそれを開くことはなかった。
ジニアスが「見ないのか」と尋ねたが、アルバは首を横に振った。
「……あのとき、私の問いに答えなかったアルダンの意志を、暴くような真似はしたくありませんから……。それに、あの慈悲深いオオガミ様に抱かれて眠っているのです。きっと今は、心安らかでいることでしょう」
そう言って笑った顔が泣きそうで、ジニアスはもう、それ以上はなにも言わなかった。
「ジニアス、やりたいことがあるんだけど」
巨大な〝盾〟をつくり出した反動でベッドと友達になっていたリファは、回復してすぐに〝緑の指〟で、荒野をひと晩で実りある深い森に変えた。草木ひとつ実らなかった土地は豊か大地となって、様々な木々を育て、そしてほかの命も育んだ。
百年荒野だった土地は、世界でも稀に見る、美しい森に生まれ変わったのだ。
そこにオオガミの願いが込められていることを、リファは知っていた。
膨大な魔法を使って再び寝込んだリファは、ジニアスはじめアンガッサにさんざん叱られた。だから事前に相談したのに、「全然大丈夫ってのんきに笑ったのはお前だろうが」「どこが大丈夫なのか言ってみなさい」と一喝された。
けれどそれが、なんだか心地よかった。
双子たちは忙しい執務を抜け出して、寝込んだリファを笑いに毎日お見舞いに来てくれる。アイとイフはジニアスたちのように怒ったりはしなかったが、かなり心配させてしまったらしく、ちょいちょいお小言をもらった。リファはもちろん、それを甘んじて受けた。
リファの所業はオオガミの御(み)業(わざ)とされ、いつしか呪われた不毛の国は、神が眠る美しい緑深い国と呼ばれるようになる――。
しかし一段落ついたのも束の間、以前よりオリエイエやほかの国の人間が出入りするようになった城で、美しく愛らしいリファを見た人々が彼女に求婚しだすようになった。これではもとの木阿弥である。
さらには、オオガミの国に絶世の美少女がいるという噂を聞きつけたリファの両親が、娘を捜してアルフレートを訪れて無事再会できるのも、また別の話である――。
(もしかしてこれもオオガミの魔法なのか?)
人間にも動物たちにもモテてしまって、リファは落ち着く暇もない。
リファの疑問に、ミミを頭にのせたクロマユはピーとのんびりと鳴くだけだった。