静かな音
                 一章
         「人には出来ること、出来ないことがある」

“ラッフィー、誕生日おめでとう!また会えたらいいね。”

「カチッ」

ベランダで日光に当たりながらタバコを吸っている俺がいた。

電車の音。
鳥の鳴き声。
この二つを聞きながらタバコを吸う。
いつの間にか、これが習慣になっていた。

俺は、田中亮平。
フィリピンのハーフでラファエルという名前もあることから、皆からはラッフィーと呼ばれている。

先週、大学を卒業したばかり。そして今日は、22歳の誕生日。

今月は、色々なことがあって、友達のメッセージを見るまでは自分の誕生日であることを忘れていた。

ガタンゴトン。ガタンゴㇳ.....

「あ、やべぇ。電池買わなきゃ」

タバコの火を消して部屋に戻ろうとした時、携帯のバイブレーションが鳴った。

先日求人応募した会社からのメールだった。

「件名:『〇〇〇株式会社』ご応募いただきありがとうございます。
 
 〇〇様
 
 〇〇〇株式会社 採用担当です。
 この度は、弊社の障がい者採用にご応募いただきありがとうございます。
 つきまして、書類選考を進めていただく、履歴書を事務局宛にご郵送いただきますでしょうか。」

“障がい者”。

この言葉を見ると、自分は障害者であることを思い出させる。

自分は生まれつき左耳が聞こえず、右耳は一年に一回聴力が低下する程度だったが、大学3年生の夏に高熱が出たことが原因で毎日変動するようになった。

つまり、俺は難聴者である。

障害を持っていることは、家族しか知らない。コロナウイルスが広がったことで学校の授業はオンラインで実行し、一人で過ごす時間が多くなったため、友達に伝えることが出来ずにいた。

普段は、補聴器を付けて生活しているが、人前では外している。

なぜなら、周りの人の視線が気になるからだ。

人種や性別、障害者といった、異なる個性を持った人達が周りにいる。

しかし、肌の色が違ったり、言語が違ったり、出来ることが限られている等、自分たちと“違う”といった理由で差別が多くの場所で起こっている世の中だった。違うという理由で、いじめや注目したりする。それが多くの人にとって、トラウマを引き起こしたり心地よい場所を失う。

そんな世の中が”自分らしさ”を大事にする力を低くさせる。

俺もその一人だった。

今年の誕生日を特別な日にしよう。

そう思って気づいたら、パソコンの前でこの小説を書いていた。

自分と同じ立場にいる人にはやる気と刺激を与え、違う立場にいる人にもっと難聴者について知ってもらいたい。

それが小説の目的である。

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