偽りの夫婦〜狂愛〜
「陽愛?ただいま」
と言って、陽愛の横に座り顔を覗き込んだ。
「あ、紫龍…おかえり」
「陽愛?体調悪い?」
そのまま陽愛の額に、自分の額をくっつけた紫龍。

急に顔が近くなり、赤くなる陽愛。
「熱はなさそうだけど、顔赤い?
今日はもう横になった方がいいな…!
おいで?寝室行こ?」
頭を撫で、立ち上がる紫龍。

それを見上げる、陽愛。
「ん?もしかして、抱っこしてほしい(笑)?」
「……うん」
「え…?陽愛?」
冗談で言った紫龍の言葉に、無意識に答えた陽愛。
陽愛は普段こんな恥ずかしいことを、してほしいと言わない。
三好がいるのもあり、甘えないのだ。

「え…いや、ううん。
自分で行けるよ!」
ほんとに無意識だったようで、自分自身もびっくりしている。
「おいで?抱っこするよ!」
「いや、あれは冗談だよ?自分で行けるから、大丈夫だよ?」
「ダーメ!そんな可愛いこと言われたら、俺の方が抱っこしたい!」
陽愛を軽々抱きあげた。
陽愛も素直に抱きついた。
その拍子に、陽愛の肩にかかっていたカーディガンが落ちた。

「あ、待って!一度下ろすよ。カーディガン取るから」
とソファーに下ろそうとすると、
「いらない!もう着ないから!」
と陽愛が、少し尖ったような声で言った。

「え?どうしたの?そのカーディガン、気に入ってよく着てたでしょ?陽愛の店の限定だし」
「うん、でも…もう着たくないの。早く横になりたい。紫龍にギュってされて、寝たい」
紫龍の首にしがみつくようにして、言った。
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