偽りの夫婦〜狂愛〜
紫龍が帰り着くと、
「おかえり、紫龍」
「おかえりなさいませ、旦那様」
陽愛と三好が玄関に出迎えに来る。

「ただいま、陽愛」
陽愛を抱き締める。
「んー。癒される……」
「苦し…紫…龍…」
「フフ…ごめん!」
腕の中から解放される、陽愛。

「紫龍、ご飯は?」
「食べたよ」
「そっか」
ソファーに座った紫龍が、両手を広げる。
「おいで?陽愛」
「うん」
引き寄せられるように、紫龍の足の間に座る。
後ろから抱き締めた、紫龍。

「で?“アレ”のこと教えて?」
「アレって?」
「報告、あるんでしょ?」
「あ、鳥羽さんのこと?」
「そうだよ。“アレ”だよ」
「アレって、失礼だよ?」
「名前、呼ぶ価値もないよ」
後ろから、紫龍の黒い雰囲気に寒気を感じる。

「で?報告…して?」
「うん…鳥羽さんにね…」
「うん」
「手を…掴まれた…の」
「手?どっちの?」
「え?えーと、右手かな」
「右手…」
後ろから陽愛の右手を掴む。
そのまま口元へ持っていきキスをした。

「ん…紫龍?」
「消毒中…!あとは?何かされた?」
「………」
「何?」
「……耳…ピアス、触られ━━━痛っ!」
紫龍が、陽愛の左の耳たぶをピアス事噛んだ。
「消毒…」
「だからって噛まなくても……」
「だって、許せないから…。
陽愛のこと見るだけでも、許されないのに、手を触り、耳まで触るなんて……」
「んん……耳元でしゃべらないで…?くすぐったい…」
「さぁ…どうしようか…?」
「え?」
陽愛が振り返って、紫龍を見る。

「陽愛は“俺の”陽愛なのに、俺以外の人間に触られるなんて……」
「え…ごめんなさい…でも、ちゃんと報告してるでしょ?」
「陽愛」
名前を呼び、紫龍は自分の口唇をトントンと指で叩いた。
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