偽りの夫婦〜狂愛〜
「そうじゃなくてね…」
「ん?」
「紫龍は……」
「うん」
「三好さんのこと、どう思ってるの?」
「はぁ?」
「え?」
一気に、紫龍の雰囲気が黒く重たくなる。

「陽愛の口から…俺以外の名前聞きたくない」
「え……」
「俺のこと知りたいんだよね?」
「うん」
「だったら、言わないでね?俺以外の名前……。
いつも言ってるよね?
俺“だけ”の陽愛だって!
てことは、陽愛は俺以外の人間のことを考えてはいけないんだよ!」
「え?でも…三好さ━━━━━」
「あーーだから!」
そのまま、紫龍に押し倒される。

「言うなっつったよな……!俺以外の人間の名前」
「ンンン……」
そして、口唇を奪われた。
「虫酸が走るんだよ!お前は俺のモノなのに……」
また激しく、紫龍に抱かれた陽愛だった。

「紫龍はズルい……」
また果てて、紫龍の腕枕で頭を撫でられている陽愛。
「ん?
陽愛が俺を嫉妬させるからいけないの!」
「そうじゃなくて!」
「何?」
「紫龍ばかり…私のこと詳しいのが嫌なの!私も紫龍のこと知りたいのに!
私だって…嫉妬してるのに……」
「嫉妬…?」
「え?いや……」
「何?どんなことで嫉妬したの?」
「私は紫龍のこと知らない。人参嫌いとかそんな小さなことさえも……」
「は?」
「三好さんは普通に知ってるでしょ?何も言わなくても、紫龍の言わんとしてることわかるし」
「フフ…可愛い…陽愛」
「だから!可愛いって言えば済む問題じゃ……」
「家政婦」
「え?」
「三好のこと!
家政婦としか思ってない。
陽愛が俺のモノなのと同じように、俺も陽愛のモノだよ!」
「うん…」
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