偽りの夫婦〜狂愛〜
次の日の仕事終わり。
紫龍へのメール連絡も終わり、帰ろうと駅に向かう。

「紫龍様~」
え?紫龍?
……と、誰?

紫龍と知らない女性が、腕を組んでいた。
【陽愛が俺のモノなのと同じように、俺も陽愛のモノだよ】
と言ってくれていたのに、こんなことひとつでこんなに不安で息苦しくなる。

無意識に紫龍の後をつけていた。

二人は高そうなクラブに入っていった。
「もしかして、ホステスさん?」

おそらくそうだろう。
返信のメールにも“今日は遅くなる”と書いていた。
「なんだ!変な嫉妬しすぎたな、私(笑)」
紫龍だって、付き合いなどでクラブに行くこともあるだろう。
こんなことで嫉妬するなんて、バカげている。
帰ろうと、踵を返した。

「君、可愛いね~!うちで働かない?」
「え?あ、いえ…」
紫龍が入っていったクラブの前で、声をかけられる。
「へぇー結構上物だ。ママに紹介するよ?」
「は?困ります!」
こんなこと紫龍に、知られたら……

「あれ?陽愛様?」
「え?森井さん?」
「どうされたのですか?こんなとこに来てはダメですよ!紫龍様に知られたら……」
「あ、いや、違うんです!えーと…そう!迷って!道に!」
「は?」
「………」
どう考えても、見苦しい言い訳だ。
「とにかくお送りしますので、お車に……」

その時だった。
~~~!
スマホの着信音。
画面には紫龍の文字が。
「はい」
『陽愛!?今、どこ?』
「え?」
『家に帰ってこないって、三好から連絡あった。
メール来てから、もう一時間も経ってるし』
「あ、えーと…」
上手い言葉が見つからない。
『どこ?言って!俺がGPSで探る前に……正直に…』
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