偽りの夫婦〜狂愛〜
後ろから紫龍が抱き締め、眠っている二人。

「んー。朝か…フフ…紫龍、寝顔綺麗。起きなきゃ…」
陽愛が目を覚まし、振り返る。
起きようと、紫龍の腕の中から出ようともぞもぞと動く。
でも、更に紫龍に抱き締められた。

「え?」
「まだ、ダメだよ?
俺から離れないで…!」
「紫龍起きてたの?
もう起きて用意しないと……。
それにトイレに行きたい…」
紫龍に向き直り、目を覗き込んで話す陽愛。

「わかった。じゃあトイレは行っていいから、すぐに戻ってきて!」
「え?でも…もう起きないと…仕事が…」
「今日は仕事お休みして?三好に連絡させるから」
「は?でも……」
「俺の言うこと聞いて?
それとも仕事辞めさせて、ここに閉じ込めようか?」
「あ…それは……」
ビクッと身体を震わせた、陽愛。

記憶を失くす前からの陽愛の性格なのだろうが、とてもお人好しで、臆病な陽愛。
だからこそ、紫龍も記憶を刷り込み、洗脳できたのだが。

「早くトイレ、行ってきな?もれちゃうよ(笑)」
「うん…」
寝室を出て、トイレに向かった。
用が済み、寝室に戻る途中。
「奥様、おはようございます」
「あ、三好さん。おはようございます」
「朝食できてますよ」
「あ、でもすぐに紫龍のとこに戻らないと……」
「そうゆうことですね…では、奥様の職場に連絡しておきましょう」
「え…?」
どうしてわかったの?と三好をただ見つめる陽愛。
紫龍と三好の阿吽の呼吸に、ビックリしていた。
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