偽りの夫婦〜狂愛〜
よく考えれば、紫龍に手料理を出すのは初めてだ。
記憶喪失の前には手料理を披露したことあったかもだが、初めてのように緊張している。

「う…」
「う?」
「旨い!!」
「ほんと!?」
「うん!」
頭を撫でながら、紫龍が言う。

「よかったぁ…
あの…」
「ん?」
「どっちが美味しい?」
「え?」
「私と…み……」
「は?」
頭をブルブル振る、陽愛。

「ううん、なにもない!」
「愛情のかけ方が違うだろ?」
「愛情?」
「俺を思う愛情」
「だったらきっと……」
「は?」
「紫龍は感じないの?三好さんの愛情」
「………」
「三好さん、きっと…紫龍のこと……」
「三好の方が強いの?」
「え?」
「俺に対する愛情。
陽愛は自信ないの?三好に勝てないの?」
「そんなことない!!」
「だったら、不安になる必要ないよ。
それとも俺の愛情が伝わってないの?
教えようか?今すぐに!!」
そのまま陽愛の口唇を奪い、貪った紫龍。

「ンンン……」
お酒なんて飲んでないのに、紫龍の狂った思いが伝わってくるように、クラクラする。
紫龍に酔っていく。
椅子に座っているのも、耐えられなくなりテーブルに手をついた拍子に、グラスが落ちた。

パリン━━━━!
「んぁ……」
そこでやっと解放された。
「伝わった…?」
陽愛の口唇をなぞり、紫龍が言う。
「はぁはぁ……うん…」
息を整えようと、紫龍にしがみついて陽愛が答える。

「今度から、俺の愛情が伝わらない時こうしよう。
そしたら、陽愛に伝わるでしょ?
俺の狂った深い愛情」

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