偽りの夫婦〜狂愛〜
帰る途中の車内で、紫龍は陽愛の事を全て白雪に話した。
記憶喪失のこと、それを利用して洗脳し結婚したこと等。
「そう。やっぱ、俺の紫龍だ。
益々早く会いたいな、愛妻に」
「フフ…明日…っつうか今日、陽愛が起きたらな!」

自宅マンションに着く。
「お疲れ様でした。紫龍様、白雪様」
「ん」
「ありがと!森井さん!」

自宅に入り、
「おかえりなさいませ、旦那様」
「あ、白雪。俺の従兄弟」
「はい。初めまして、家政婦の三好と申します」
「初めまして、三好さん!」
フワッと微笑む、白雪。
握手を求める。
「あ、はい////」
顔を赤くしその手を握り返した、三好。

白雪もかなりの美形。
紫龍は黒王子で、白雪は白王子だとよく言われていた程だ。
「三好、今日白雪が泊まるから、部屋連れてって」
「はい、畏まりました」
「じゃあ…また後で!おやすみ、白雪」
「うん、おやすみ…紫龍」

紫龍が寝室に向かった。
「白雪様、こちらへ」
「うん。陽愛ちゃんってどんな子?」
「え?とても可愛らしい方ですよ」
「へぇー。楽しみだな!」
「あの、奥様を狙うようなことは………」
「ないよ!誓って!
紫龍の大切な人を奪おうと思わないし、俺の愛する人は生涯一人だけだから…紅音だけ…」

「あ…すみません。余計なことを言って……」
「ううん」
三好は思う。
この二人、似ている。
お互いに想い合っていて、兄弟愛のようなものを感じる。
そして愛する相手を想う異常さや、その人以外への興味のなさ、おそらく残酷さも。
今後は陽愛を傷つけるモノには、紫龍だけでなく、白雪の怒りも買うことになるだろう。

三好は言葉にならない、恐ろしさを感じていた。
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