残念御曹司の最初で最後の恋物語
――そのとき。
「きゃっ!」
「うわっ」
噴水台の影から突如現れた影と勢いよくぶっかった。ドンという鈍い音とともに、そのままレンガタイルの上に派手に転がる。
声は女性だった。
まずい!
痛みを堪えてすぐさま体を起こす。
「っ⋯⋯す、すいません! 急いでて⋯⋯お怪我は!」
「いえ、大丈夫です⋯⋯」
とは聞こえたものの、前方に見えるスカートからすらりと伸びる白い足は大きく擦りむけ、血が出ている。
サーッと青ざめた。
「あああぁ! 本当に申し訳ない」
「いいえ、大丈夫です。私も、ボーッとしていましたし」
「ほ、保健室に――」
慌てて駆け寄り、女性の顔に視線を移した瞬間。
僕の中の時間が停止した。
なんてことだ。
これは、運命のいたすらだろうか。